キビるコラム!第二弾「記憶に触れる」

キビるコラム!第二弾は「劇団go to」の代表であり、劇作家・演出家・女優の後藤香さんに、宮崎の「劇団こふく劇場」について書いていただきました。

主宰の永山さんとは同級生なんですよ。永山さんと、飛ぶ劇場の泊さんと。泊さんのことは昔から存じ上げていたんですけど、永山さんのことは当時知らなくて。一番初めは、1999年、だから20年くらい前、たしかそのころには泊さんは北九州で文化振興のお仕事に関わっていらっしゃって。その時に『生徒指導推進啓発劇』みたいな作品の執筆を依頼されたんですが、複数の作家さんがそれぞれ作品を書く形式で、その中に永山さんもいらしたんです。その時「あ、同い年なんですね」と少し話して。

その後すぐ宮崎で自分の劇団でやっている活動があるからWSで来てくれないかと誘ってもらい宮崎まで。で、それからちょくちょく会ってたんですが、その後宮崎県立芸術劇場の「演劇・時空の旅」シリーズの第一弾(2009年)に呼んでもらってさらに親しくやりとりするようになりました。

時空の旅以降は、永山さんが主催している宮崎県三股町の「まちドラ!」の演出で呼んでもらって、次の年は町民の方の演出をしにいって、今年は自分たちの劇団の作品「愛の賛歌」を上演して……と連続で行かせていただきました。

永山さんの作品は、そうですね。宮沢賢治に似てるなぁって……いや、頭がということではないですけど(笑)

おそらく演劇的に、色々な方法で観客の五感を刺激しようとしているんだと思うんですよね。能のような動き、台詞の分解、役者に「普通はそう動かないだろ」みたいな動きをさせたり、逆に役者の演技を制限したり、ということをよく見るんですけど、そうやって演劇的な試みをしながらも、でも観てると気持ちよくなるんですよ(笑) 永山さんが音楽好きっていう影響もあると思うんですけど、役者さんの声が特徴的で綺麗なんですよね。だから観て、聞いてて、気持ちよくなる所以なのかなと。

人が生まれて、食べて、泣いて、笑って、眠って。外側から見たら特別大きな何かが起きるわけではないけれど、内側ではとても大きな何かが起きていて。それは傍から見たらとても日常的なことで、でも恐らく私たちは日常の中で揺れているんです。上がったり、落ちたり、痛めたり、あったかくなったり。そんなことを演劇的な手法を使って、脳みそを刺激しながら観ている人の気持ちに訴えてくるというか。

観る人に少し考えさせているんだと思います。そのまますっと届けるのではなく、そこに違和感を加えて、引っかからせてるというか。作品自体ももちろん、笑ったり泣いたりできるんですけど、観てその場だけでスカッと消化してしまう訳ではなく、観た後にじわじわと、自分で考えたり思い出したりして発酵していくような……なんとなく自分の日常にぼんやりとした輪郭で思い出されていくんです。とにかく、気持ちがいいんです。

荻上直子さんの「めがね」っていう映画があるんですけど、これも見たときにこふく劇場の作品を思い出しました。ただ人が生きてる様を描いているんですけど、ずっと見ていたくなるんですよ。朝起きて、ご飯作って、食べて、ラジオ体操して、海観て、ぼんやりして、また美味しい食べ物を食べて、気持ちいいお布団で寝て。その中で人の気持ちが揺れていくのに、ちょっとツーンとくるんです、その映画が。それと同じ感じがします。

数年前に、「ただいま」を観たんですね。その時も役者の動きを制限する演出があって、あ、でたと思いながら見てたんですけど(笑) やっぱりみてて気持ちがよくって、クスクスと笑って。ほんと、淡々とした物語を観ているつもりだったんですけど、ラストの方で涙が止まらなくなるんですよ、いつもなんですけど。

ネタバレになるけれど、もちろんドラマチックなことは起こってるんです。誰かが亡くなるとか。でもシンプルに人が死んだから悲しい、じゃなくて、自分のいる場所とか、そばにいてくれる人とか……死をきっかけに色んなことが一緒になってバーッと押し寄せてきて、自分の記憶に触れてくるんです。

3年前に観て涙した私と今の私はまた違うから、改めて観て、新たにどんな風に揺れるんだろうというのが今から本当に楽しみです。

私の作品は、直接的に観客の記憶に滑り込もうとするんですけど、永山さんの作品はすごく間接的に、記憶の底に埋もれているものを起こしてくれるような気がします。

これは言い過ぎかもしれないけれど「愛の賛歌」にたどり着いたのは永山さんの影響かもしれない。母と子、代々繋がっていくこと、そういうものをさらに大きなくくりで永山さんは見せてくれます。すごい大昔の人がいて、自分がいるとか。私の中に積もってたんかなぁ。命のこととか、そこにあることとか、死んでいくということが描かれている感じで。いや、流石に言い過ぎですかね(笑)

色んな人に見てほしいけど、特に年を重ねた方に観てもらうと、自分の痛点みたいなものがたくさん見つかると思います。内側を揺さぶらるんですよねぇ。淡々と進むけど、人物のおかしさが出てきてクスクス笑ってしまう、そんな良質なお芝居です。


キビルフェス2019参加作品

劇団こふく劇場「ただいま」

ご予約絶賛受付中!下記URLより!

★後藤香 公演情報★

・12/22~26 FOURTEEN PLUS 14+「マンシューまで15分」(ぽんプラザホール)出演

 詳細はこちら

・2/14-15 九州ビジュアルアーツ進級公演「わたしの星」演出


後藤さんコメント:

『マンシューまで15分』、小説のような戯曲を、音楽のようにダンスのように分解してお届けする演出は必見です!『わたしの星』は、岸田國士戯曲賞受賞作家:柴幸男氏が高校生に書き下ろした戯曲に、俳優学科の18・19歳が挑みます!無料公演。そして劇団go to、2019年活動予定です。どうぞよろしくお願いいたします。


第三弾は京都・下鴨車窓について、演劇ユニットそめごころ演出家/劇作家の石田聖也さんに書いていただきます。お楽しみに!

KIBIRU STAGE ART FESTIVAL